2020年4月現在、新型コロナウイルスの感染が拡大している中、国民の命が危険にさらされています。と同時に経済活動の停滞による危機も同時に訪れています。
このような中、2020年4月7日に「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」が閣議決定されました。
この経済対策については、TVニュースやSNS等でも賛否様々な意見が交わされていますが、ふと気になるのは「正しく中身を知って発言しているのかな?」というものでした。
そこで今回は、経済対策のポイントを分かりやすくまとめました!まだ可決したものではないため、変更される可能性もありますが、現時点の内容を正しく把握していきましょう。
目次
緊急経済対策の概要
今回出された経済対策は2つのフェーズと5本の柱で構成されてします。
引用:新型コロナウイルス緊急経済対策(内閣府)
2つのフェーズ
- 緊急支援フェーズ
- V字回復フェーズ
①緊急支援フェーズ
事態の早期収束に強力に取り組むとともに、その後の力強い回復の基盤を築くためにも、雇用と事業と生活を守り抜く段階
②V字回復フェーズ
観光・運輸、飲食、イベントなど大幅に落ち込んだ消費の喚起と、デジタル化・リモート化など未来を先取りした投資の喚起の両面から反転攻勢策を講じる段階
5つの柱
- 感染拡大防止策と医療提供体制の整備及び治療薬の開発
- 雇用の維持と事業の継続
- 次の段階としての官民を挙げた経済活動の回復
- 強靱な経済構造の構築
- 今後への備え
①から⑤は感染拡大の初期対応から収束へ向かうための取組という流れになっています。今回は経済対策のメインともいえる②「雇用の維持と事業の継続」について、詳しく説明していきます。
「雇用の維持と事業の継続」の中身
①雇用の維持
新型コロナウイルスの拡大で急速に経済が停滞した結果、利益を上げられない企業が多発しています。その結果特に体力のない中小企業は雇用をおさえる方向にシフトせざるを得ないという状況です。
そういった状況を鑑みなるべく雇用を維持されるように提案された内容が以下の取組です。
- 雇用調整助成金の特例措置の更なる拡大
- 新卒応援ハローワークにおける内定取消者に対する特別相談窓口の設置
- ハローワークにおける外国人労働者、事業主、非正規雇用労働者、就職支援又は住居・生活支援を必要とする求職者等に対する相談支援体制等の強化
- 雇用保険を受給できない求職者を対象とする求職者支援訓練の拡充
- 新型コロナウイルス感染拡大により困難を抱える外国人材の受入れ支援体制強化

(2)資金繰り対策
観光や飲食店、イベント関係など集客面で新型コロナの影響をもろに受ける業界では倒産が多発してしています。2020年4月10日現在では48件発生しており(下記グラフ参照)、新型コロナの終息や強力な対策がなければ今後も増加していくでしょう。

倒産を防ぐための資金繰りに関する提案は次のとおりです。
- 日本政策金融公庫等による特別貸付及び危機対応業務による資金繰り支援(中小・小規模事業者への実質無利子化含む)の継続
- 小規模事業者経営改善資金(マル経融資)の実質無利子化日本政策金融公庫等や保証付き民間融資の既往債務の借換
- 保証料減免を含む信用保証の強化・拡充
- 民間金融機関でも実質無利子・無担保の融資を受けることができる制度の創設
- 小規模企業共済の契約者に対する、掛金納付額の範囲内での無利子融資の実施
- 医療・福祉事業者への資金繰り支援の拡充
- 農林漁業者向け融資の実質無利子・無担保化等の資金繰り支援の拡充
- 中堅外食事業者資金融通円滑化対策
- 中小食品流通事業者の信用力強化(債務保証事業)
- 航空会社に対する着陸料等の支払い猶予や危機対応融資等
- 民間金融機関への要請に際し、事業者の貸出し後の返済能力の変化を適時適切に捉えた対応の徹底
- その他
(3)事業継続に困っている中小・小規模事業者等への支援
こちらは「融資」枠ではなく「給付」に関する対策です。
- 中小・小規模事業者等に対する新たな給付金(持続化給付金(仮称))
- 中小企業生産性革命推進事業の特別枠創設
- 新型コロナウイルス感染症の影響を受ける中小・小規模事業者向け経営相談体制強化事業
- 地域企業再起支援事業
- 国内外の中堅・中小企業等へのハンズオン支援
- 収入が減少した事業者の社会保険料の納付猶予
- 賃貸用ビルの所有者等に対する、飲食店等のテナント賃料の支払い猶予など柔軟な措置の検討要請のしはらい周知
気になる「持続化給付金(仮称)」というものの給付条件は以下のとおりです。
事業収入が前年同月比 50%以上減少した事業者について以下の範囲内で前年度の事業収入からの減少額を給付する
・中堅・中小企業は上限 200 万円
・個人事業主は上限 100 万円の
(4)生活に困っている世帯や個人への支援
新型コロナウイルスの被害を受けているのは何も会社だけではありません。生活をする個人一人ひとりが弱っています。
という中での世帯や個人に対する経済的支援の項目は以下のとおりです
- 生活に困っている世帯に対する新たな給付金(生活支援臨時給付金(仮称))
- 子育て世帯への臨時特別給付金
→児童手当受給世帯を対象に子供1人につき1万円を給付するという案 - 国民健康保険料、介護保険料等の減免を行った市町村等に対する財政支援
- 収入が下がった方に対する国民年金保険料の免除
- 個人向け緊急小口資金等の特例貸付の継続
- 住居確保給付金の支給対象見直しによる支援の拡充
→経済的な理由で住居を失った人を対象も3か月間(最大9カ月)の間、自治体が大家さんの口座に直接家賃を振り込むというもの - 奨学金や授業料の減免を通じた支援
- 未払賃金立替払の迅速・確実な実施
- セーフティネット住宅の家賃低廉化など住まいの確保支援
- 配偶者暴力の深刻化に対応するための相談体制の拡充
- その他
気になる「生活支援臨時給付金(仮称)」というものの給付条件は以下のとおりです。
世帯主の月間収入(本年2月~6月の任意の月)が次の2つのいずれかに該当する場合に1世帯当たり 30万円の給付を行う
- 新型コロナウイルス感染症発生前に比べて減少し、かつ年間ベースに引き直すと個人住民税均等割非課税水準となる低所得世帯
- 新型コロナウイルス感染症発生前に比べて大幅に減少(半減以上)し、かつ年間ベースに引き直すと個人住民税均等割非課税水準の2倍以下となる世帯
内容を理解するのに分かりやすい表があったので掲載します。

(5)税制措置
新型コロナウイルスの影響で収入が絶たれているわけですから、本来納めなければいけない税金も払えない、というケースは当然でてきます。
この辺りに関する支払免除及び支払猶予の施策は以下のとおりです。
- 納税の猶予制度の特例
→無担保かつ延滞税なしで1年間、納付を猶予する特例 - 欠損金の繰戻しによる還付の特例
→資本金1億円超 10 億円以下の企業に生じた欠損金について、欠損金の繰戻しによる法人税等の還付制度の適用を可能 - 中小事業者等が所有する償却資産及び事業用家屋に係る固定資産税及び都市計画税の軽減措置
→令和3年度課税の1年分に限り、固定資産税及び都市計画税の負担を2分の1又はゼロとする - 生産性革命の実現に向けた固定資産税の特例措置の拡充・延長
- テレワーク等のための中小企業の設備投資税制
- 文化芸術・スポーツイベントを中止等した主催者に対する払戻請求権を放棄した観客等への寄附金控除の適用
- 自動車税・軽自動車税環境性能割の臨時的軽減の延長
- その他
経済対策の規模
今回の経済対策の規模に関してですが、「雇用の維持と事業の継続」を含む全体の予算規模は以下のようになっています。
5つの柱 | 財政支出 | 事業規模 |
感染拡大防止策と医療提供体制の整備及び治療薬の開発 | 2.5兆円程度 | 2.5兆円程度 |
雇用の維持と事業の継続 | 22.0兆円程度 | 80.0兆円程度 |
次の段階としての官民を挙げた経済活動の回復 | 3.3兆円程度 | 8.5兆円程度 |
強靱な経済構造の構築 | 10.2兆円程度 | 15.7兆円程度 |
今後への備え | 1.5兆円程度 | 1.5兆円程度 |
合計 | 39.5兆円程度 | 108.2兆円程度 |
まとめ
最後に主な支援の内容をまとめます。
- 損失の大きな世帯に30万円の給付
- 児童手当の1万円増額
- 中小企業への最大200万円、個人事業主に最大100万円の給付
- 収入の下がった個人への国民年金保険料の免除
- その他融資や税金の支払い猶予
新型コロナウイルスの感染拡大は収まるどころか、毎日感染数の一日あたり発生者を更新している状態です。
ということは、これから事態はますます混迷を極め長期化する可能性があるわけです。
これから問われるのは、支援の内容はもちろんとしてとにかくスピード感のある対策と分かりやすい仕組みでしょう。
そして、今回の緊急経済対策で足りなければ、第2段、第3弾と打ち出していくことが必要だと思います。